北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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小屋の前で、記念撮影

2002-09-14

 右端が、オーナーの杉田健司さんです。
 小屋の食堂には、ランプの下、大日岳の写真などと一緒に、健司さん製作のギターも飾ってありました。

蓮華鉱山道から雪倉岳  その1

2002-09-15

 鉱山道にも秋の気配 … ナナカマドの実が真っ赤に色付いて

 9日(月)の午後から蓮華温泉へ。目的は、朝日岳へ繋がる道を歩くこと。今回は昨年果たせなかった「蓮華鉱山道」を歩いて登山道の様子を確認し、また県から管理を任されている雪倉避難小屋の状況をきちんと把握してくることにありました。
 行き交う登山者のほとんどいない道を1人で登るのは、さすがに少々考えものと思い、誰か平日にこの計画に同行してくださる方を探していましたら、ちょうど日程の合う方がいらっしゃいましたのでお願いしたところ、何とか引き受けていただきました。もちろん、私の「超・遅足」を承知の上で。。。
 写真家の森下 恭さん。。。シブシブだったのかもしれませんが(笑)、「ガイド」と「荷物持ち」と「熊よけ」を兼ねて(笑)ということで、朝日小屋管理人の願いを叶えてくださいました。
 9日は前日までの大日岳山行の疲れを癒すべく、蓮華温泉でゆっくりお風呂に浸かりました。
 10日は朝食をとらずに早めに出発する旨を伝えると、蓮華温泉の田原さんに「どこまで?…えっ?雪倉の避難小屋??3時間で着いちゃうよ。ゆっくりご飯を食べてから出かければ良いのに…」と散々誘われましたが、やはり何より自分の足が心配だったので、早朝4時半起床、6時過ぎに出発にしました。
 (この蓮華温泉から避難小屋まで“3時間で”というのは、あくまで“田原さんのペースで”ということが、後からよ〜く分かりました!)
 最初から、私の大好きな道…鬱蒼とした樹林帯の中の、余り景色の見えないかなり薄暗い道ではありますが、むせ返るような木々の匂いがたまらなく好きで、その中を歩くことの幸せをつくづく感じました。そして、「登りの苦手な」私としては、余り急斜面ではなくだらだらとした緩やかな登りの連続がまたゆっくりした歩みを助けてくれました。
 この8月になってから、瀬戸川には橋も架かったということも聞いていましたので、それも自分の目で確認することが出来ました。
 登山道は、木道がかなり滑りやすくなっていますが、全体に蓮華温泉の方々の手できちんと整備され、また草刈りも終っていました。
 しかし、この道を歩く登山者の絶対数が少ないのは、やはりコース全体が長いためかと思われます。「もうすぐそこに、鉢ヶ岳の分岐点があるはず」…そう思ってからが、かなり長かったです。。。(いろいろ事情があって(?)、荷物がかなり重たかったせいもありますが)
 
 『蓮華鉱山道』は、いわゆる一般ルートではあるかもしれませんが、しかし誰でも行けるコースだとは思えないように考えます。
 「健脚向き」だと思いますし、特に、雪融け直後にはルートの不鮮明な箇所もあります。また利用する場合には瀬戸川の橋の状況を必ず確認しなければいけません。徒渉ということになれば、歩ける登山者はもっと限られてくるはずです。
 そして何よりも、『自然』を大切に思ってくださる方々にだけ、そっと歩いていただきたい…そんな道でした。

蓮華鉱山道から雪倉岳 その2

2002-09-16

 神の田圃付近  
 
※ 蓮華温泉のオーナー・田原さん達はいつもここの上部にある「雪倉上の沢」を通っていらっしゃるようですが、途中に大小の滝もあり、山を歩き慣れている登山者の方でないと無理がありそうです。

 今回雪倉岳避難小屋では、都立大大学院・環境変遷学研究室の黒田さんと、元Gパト・おなじみのじっきーの2人と合流することになっていました。黒田さんは、昨年に引き続き「斜面形成の編年に関する研究」をテーマに鉢ヶ岳・雪倉岳周辺の地形・地質を調査しておいでになり、先日は朝日小屋にもご挨拶にいらっしゃいました。
 またじっきーは、数日間その調査のお手伝いに入山しているということだったので、朝日小屋・雪倉岳避難小屋の管理人としても、周辺の山々のことを少しでも知っておかなければいけないだろうというので、避難小屋で落ちあうことになりました。
 黒田さんは毎日朝から夕方まで、山を歩きまるで土木作業員のように集中して力仕事をしていらっしゃるとか。避難小屋での不自由な生活が長いせいか、いろいろ工夫しているとはいえ食生活をはじめかなりの耐乏生活を強いられているようでした。顔は真っ黒、髭は伸び放題でしたが、その話し振りからは充実した毎日の様子がうかがい知れました。
 翌11日は、黒田さんに周辺を案内していただきました。森下さんと3人で歩きましたが、さすがに森下さんは山をよく歩いて予備知識も豊富なだけに、興味深そうに黒田さんにいろいろ質問をしていらっしゃいました。
 白馬連山の山並みや三国境、雪倉岳に囲まれながら、地形や地質の難しい話ばかりでしたが、漠然とですが、私は2人の会話を聞きながら「自然」の偉大さや営みの不思議さ、壮大さに何となく感心させられたり、驚かされたり…。
 いろいろ収穫の多い、今回の「蓮華鉱山道から雪倉岳」山行でした。

蓮華鉱山道から雪倉岳  番外編

2002-09-16

 雪倉岳避難小屋前での記念撮影  02.9.11   
  左から黒田さん、私、じっきー、森下さん     photo by 自動シャッター

 荷物が。。。
 耐乏生活で、きっと美味しいものに飢えているだろう黒田さんとじっきーに、ぜひご馳走したいという思いで蓮華温泉から食材を担ぎ上げることにしたのですが、「え〜っっ、こんなに持っていくんですか!?」と森下さんに言われながらパッキングしました(笑)。
 でも、「キムチ鍋にしましょう!!」と言い出したのは、森下さん。その希望に沿って食材の買出しをしたのですが、「まあ、どうでも避難小屋までだから」とあれも欠かせない、これも入れなくてはと揃えていくうちに、とんでもないことに。。。
 みんなで飲むビール350mlが6缶、焼酎パック1800ml、豚肉1キロ、お米、キムチ800g、翌朝残ったキムチ鍋に入れるうどん3玉、お餅、コッヘルやガス。。。これらはみんな森下さんに担いでもらい、またシュラフ等の他、当然カメラや三脚の「商売道具」を入れた彼の荷物は約30キロ以上になりました。
 そして私。。。いくら何でも私だけ身軽でというわけにはいきませんから、私もそれなりに担ぎました。白菜半切、豆腐小3丁、ニラ、えのき、ネギ等などの野菜類をはじめ、その他嗜好品の数々、そしてシュラフやマットその他の個人装備。。。途中で水も各自2リットル近く確保して担いだので、私も最近持ったことが無いほどの荷物になりました。
 そんなこんなで…やっぱり「珍道中」になりました(笑)。
 前述したとおり、途中の緩やかな登りは全く苦にならなかったのですが、最後の登りでは、荷物が肩に重くもうバテバテ。。。でも、今回は森下さんもそんなに甘くはない!!。。。「大丈夫ですか?」と声を掛けてはくださいましたが、決して妥協を許してはもらえませんでした。(去年の朝日小屋〜蓮華温泉〜白馬岳の山行では、新米の私にもう少し優しかったような気がしたのに…笑)。
 でもお陰で、『山は自己責任』ということがとても良く分かりましたし、山の厳しさを知ると同時に、辛さの後に待っている楽しみも大いに味わうことができました。
 森下さんの注文でぜひ行動食にと持って行った「果物入りゼリー」を、鉢ヶ岳の分岐に辿り着いたところで食べました。その美味しかったこと!!…ちょっと大袈裟ですが、何だかとても嬉しくて、涙が出そうでした。

名(迷?)ガイド…

2002-09-16

厳しいまなざしでファインダーを覗く、森下 恭さん

 私は、歩くのが下手です。
 特に登りが苦手で、急登では頑張ろうと思っていても、すぐに立ち止まったり大息をついたり。昨年までは、重い荷物を担いで歩くこともありませんでした。(若い頃、20キロを背負って北又からの道を挑戦したことがありますが、途中でダウンした)
 小さい頃から恵振山の急登を登っていたとはいえ、朝日岳しか知りませんでしたし、小屋に着けば何でも置いてありましたから、下から担ぎ上げる必要もありませんでした。ですから、私のザックの中はいつもポンポンと軽く小指で持ち上げられるくらい。
 登山道も、ほとんど北又からの道しか歩いたことがありませんでしたので、ペース配分も何も余り関係ありませんでした。
 おまけに、右足の股関節を手術しているからでしょうか、最近は年齢的なものも加わったのか、シーズンオフにいろいろ山を歩いている時はもう少し強くなったようにも思ったのですが、夏の間歩かなかったツケが残ったようです。
 そんな「山登りの苦手な私(?)」、今回の鉱山道もいつも以上にゆっくりゆっくりとかたつむりのような私の歩きでしたが、文句も言わずに先導したり後ろに付いたりしながら、「名(迷?)ガイド」役を果たしてくださった森下 恭さんでした。

去年と同じ…

2002-09-17

“鍋パーティー”の様子  
  「去年の9・17」と同じアングルで photo by 自動シャッター

 9月中に2回ある連休の内、初めの連休が終りました。週間天気予報ではまあまあのお天気になる予定でしたが、この3連休は雨や風にたたられ寂しい限り。。。それでも14・15の両日はお客様もありましたが、昨日と今日は激しい雨風でしたので小屋もテント場もどなたもお客様はいらっしゃいません。
 そこで、昨日も今日もやっぱりみんなで「お鍋!!」…ところが哲也が、「ゆかりさん、去年の9月16日もお客様はゼロで、森下さんと3人で鍋をしたんですよネ」
 去年の17日の日記も、今日と一緒のアングルで、しかも「出張」に出掛けることを書いています。例年今の時期は、季節の端境で紅葉にも未だ早く、また少しでも雨が降ったりすると寒さも増す為か、平日にはほとんどお客様がないようですね。
 でも去年は哲也と2人、寂しい日々も過ごしましたが、今年は孝太も居てくれるので3人でボチボチやっています。また昨日今日とお天気が悪いので、雪倉岳避難小屋から来ているじっきーと??の祥滋も帰れないまま居残っていますので、賑やかです。
 明日もご予約はありません。寂しい平日です。

「小屋閉め」まで、あとひと月。。。

2002-09-17

今年は、早めにシーツの洗濯も始めました!

 今年の朝日小屋は、10月14日まで営業します。15日に後片付けをして、16日には下山する予定でいます。連休ですので、お天気が良ければ今年最後の賑わいもあるかもしれませんし、「小屋閉め」目がけて集まってくる常連さんやアルバイトのみんなが大集合するはず。
 去年は、小屋を閉める為にどんな作業があるのか、いつの時期にどんなことをすれば良いのか全く分からないままただ「ウロウロするだけの管理人」で、結果的にいろいろな皆さんに大きな迷惑をお掛けしました。そして、ちょうど営業最後の日に遭難騒ぎがあったりして、もうドタバタは最高潮に達し、大変な目にあいながらの下山になってしまいました。
 今年は絶対に去年の二の舞をしないように、といろいろな方たちから心配の声がありますので(笑)、そろそろ心の準備も含めて、片付けやらを始めようかと思っています。しかし、この後の天候次第ではお客様の入りも全く読めませんので、今後ひと月の食料計画を考えると頭の痛い日々が続きます。
 でも、そうやっていざ片付けを始めようと思って、使わない部屋のシーツを洗濯し始めたものの、今度は何だか無性に寂しさもあったり。。。真夏の喧騒がウソのような静か過ぎる毎日と、黄色や赤に染まり始めた周りの景色がそうさせるのでしょう。。。
 去年の9月26日の日記には、下山の日が近付いた頃の複雑な心境を綴っています。「サザンを聴きながら…」などとおセンチになっている心境が書かれていますが、今日の夜は小田和正のアルバムを聴きながらこの日記を書いています。
 PM9時近く、ただ今外の気温は10℃。 
 秋の深まりとともに、いっそう複雑になる自分の気持ち。。。

「静寂の一夜」

2002-09-18

 久し振りの夕焼け

 今日は久し振りに、夕焼けも眺めることが出来ました。しかし、夏の間ついこの前まで富山湾に沈んでいた夕陽でしたが、いつの間にか陽が落ちる位置も少し南よりに動いていました。秋なんだなぁ、と感じた一瞬でした。
 「岳人」9月号に、「アルプス静寂の一夜を探せ!山の達人に聞くお気に入りの泊まり場」という記事が出ていたのをご覧になりましたか?
 その中で、朝日小屋が“長居をしたくなる小屋”というタイトルで紹介されていました。紹介記事を書いてくださったのは、山岳ガイドの伊藤尚哉さん。昨年も朝日小屋においでになっていらっしゃいます。
 「…ダルマストーブは今でもあるだろうか…」とありますが、
 …ありますヨ!!
 昨日の日記の中にも写っていますが、1階の“大蓮華”という部屋にちゃんと健在です。今シーズンは未だ焚いていませんが、これからもっともっと寒くなると、やっぱり薪ストーブにはかないません。
 …「静寂の一夜」
 …今日のお客様はお2人、もうお休みになっていらっしゃいます。
 …哲也と孝太は熱心に読書中、そして私は日記を書いています。
 …街の灯かりがキラキラと、本当に静かな朝日小屋の夜です。