北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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『新しい発見』

2002-10-01

 雪倉岳山頂から 手前に鉢ヶ岳、そして白馬岳・旭岳の勇姿

 。。。あんなに「雪倉岳の登りは絶対登りたくない、長すぎる、歩きにくそうな斜面だし私は嫌だナ」と何度も言っていたのに、いったいどういう心境の変化ですか??。。。  
 先日、私が白馬岳へ行って来たと聞いた時の、写真家・森下 恭さんのひと言です。
 繰り返し書いていますが、私は登りが大の苦手。。。下りはわりと軽快に足を運ぶことができても、いつも登りになるととたんにギアがスローダウンしてしまって、“カメさん”か“かたつむり”に大変身!!
 だからお客様がコースを問い合わせて来られても、必ず「雪倉岳の登りは、相当キツイですヨ」と先ず口に出てしまいます。
 その私が、哲也や孝太に「ゆかりさん、今紅葉がいいですよ。ぜひUさんと行って来たら!?」と勧められて、ウッカリその気になってしまったから不思議。いつもは山仲間の後をくっ付いて行ったり、誰かしっかりしたパートナーが一緒でないと遠出はあまりしませんが、今回は「雪倉の登りを歩いてみよう…」と思ったのです。
 そして今回出掛けた白馬岳への道のりで、何かいろいろ『新しい発見』をしたような気がします。
 
 ひとつは、『私は本当に登りが大嫌いなのかしら?』
 北又から恵振山の急登は、小さな頃から何度も通った道なのであまりその苦痛を感じません。しかしいざ他の山を登る時、「自分は足が遅い」という固定観念からか他の皆さんのペースをどうしても気にして、自分の歩きを乱してしまうことが多いのですが、今回は同行のUさんにも「ゆっくり行こうね」と言いながら、私が先導して一歩一歩登りました。
 昨年から何度かガイドしてもらっている森下さんから、「慌てないでいいんです」「坂の途中であまり立ち止まらないように」「無理して大きな歩幅をとらないように」…等など、いろいろ教えていただいたことを思い出しながら、ひどくて息が乱れそうになると、歩幅をもっともっと小さくして呼吸を整えながら、それでも立ち止まらないように歩き続けるように気をつけました。
 お天気が良かったせいもあるのでしょうが、雪倉岳のキツくて長い道のりも、コースタイムを少しオーバーしたくらいで登りきることができ、最後の鉢ヶ岳〜三国境〜白馬岳山頂はコースタイムより早く歩くことができました。荷物もなるべく軽くしたからでしょうか、あまり「辛い」という感じがなかったように思います。
 
 もうひとつは、『登りと下りでは、見えるもの・見えてくるものも違うし、感じ方も違う』
 辛くて苦しい坂道を登っている時でも、可憐に咲いている道端の花や、景色の変化には目がいくことがあるものです。特に、ゆっくり歩いている時にそう思うことがあります。登りと下りの歩くスピードにもよると思いますが、下りではうっかり見逃してしまいそうな雲の流れも、前を向いて歩いている時にはふっと感じることができるかもしれません。
 また、水平道の雪倉側分岐から朝日岳山頂までの道のりも、登りと下りではこんなに感覚が違うんだなあ、とあらためて思いました。自分の身体が、いろいろな場面で様々に敏感に反応していく様がわかって、とても不思議でした。
 
 そして、『山を、正面から感じることができた』
 私は小さい頃から通い慣れた、北又からの道のりが大好きです。朝日小屋から朝日岳山頂までの道のりも、何度通っても楽しいと感じています。深い山の、緑の濃い匂いがたまらなく好きです。ブナの樹々の間を、そしてダケカンバやオオシラビソの樹林帯の中を、6月の山開きの頃や秋の小屋閉めの頃、それぞれの季節を感じながら歩くのが、本当に大好きです。
 しかし北又からの道のりでは、恵振山の頂上まで登らないと朝日岳や前朝日岳の山容ははっきり望めませんし、夕日が原まで来てしまうと、その山体も姿を変えてしまいます。
 今回の白馬岳山行では、朝日岳のどっしりと女性的な山容が眺められましたし、懐の深さもあらためて思いました。また、雪倉岳の大きな山体がその時々にドーンと迫って来て、「ここを登るのか。。。」そう思いながらも、不思議と自分の中に“挑戦する勇気”が湧いてくるのが感じられました。
 また雪倉岳を越えてからも、白馬岳や旭岳の堂々としてしかも凛とした姿がずっと目の前にあって、「この山を登る」というはっきりした意識が沸々と湧いて来ました。この思いは、下りの時に振り返って白馬岳を見遣った瞬間には感じることのできない思いなのではないかと考えました。
 
 「私、登りが苦手で…」と言ったら、「“山登り”って言うくらいだから、やっぱり山は登らんとねぇ」と笑っておっしゃったのは、大日小屋のお母さん・光子さんでした。
 いろいろな想いや感じ方を教えてくれた今回の白馬岳山行、本当に楽しくまた有意義でした。やはり管理人、自分の山はもちろん、いろいろ歩かなくてはいけません。
 小屋閉めしたら、どこの山へ行こうかなぁ…(笑)

ただ今、台風通過中…

2002-10-01

 山頂までの登山道から    02.9.26

 今の時刻、PM9:20過ぎ…台風21号が関東の近くを通過中です。少し東寄りに進路を変更したので、直撃は避けられたようですが、それでも現在外は激しい風雨です。
 哲也が不在の為、孝太がいろいろ外回りを点検したりしてくれました。夕食時、「孝太、今日は晩酌は?」と言ったら「さすがに今日は…台風も来ていることだし、やめておきます」
 全国的に、あまり大きな被害が出ずに済むと良いのですが。。。

“リピーター”の皆さん

2002-10-02

 コケモモの実    鉢ヶ岳付近    02.9.26

 昨日、台風21号が接近中にも関らずご予約のお客様がお2人、予定通り蓮華温泉からおいでになりました。まさかキャンセルだろうと思っていたのでビックリしていると「実は、7月末にもお邪魔しました。その時は栂海新道へぬけたんですが」と話しておられました。
 「毎週のように、いろんな山へ行っていらっしゃるんでしょう?」
 「いいえ、今シーズンは北アルプスは2回目ですよ!」
 まあ、1シーズンにそう幾度も行けない数少ない山行に、夏も秋も朝日岳を選んでくださったというのですから、本当に有り難く嬉しいことです。
 そういえば、今シーズンは夏においでになった方で、また秋に来てくださるお客様が何組かいらっしゃいました。今週末にも、九州の福岡県から今シーズン2回目のお客様がおいでになる予定です。
 深田久弥の百名山、誰でも知っている有名な山、見どころの違う山、ひとりで行きたい山、誘われて行く山…、いろいろな山がありますが、「好きな山」「そっと大切にしたい山」「また行きたい山」のひとつに、ぜひ朝日岳を加えていただきたいですね。

“ストッカー”が。。。

2002-10-03

 今日の朝日岳と朝日小屋   photo by kouta

 「えっ、ゆかりが“ストーカー”に…!?」
 
 いえいえ、とんだ間違い、一字違いです。お騒がせしてしまい、すみません!(笑)…最近、私を悩ませているのは“ストーカー”ではなく、“冷凍ストッカー”の中身なんです。
 営業終了まであと10日余り、そして小屋閉めまで2週間となって、今私が一番気にしているのは『食料』です。2週間の間に延べどれだけの人数分の食料が必要なのか、毎日毎日冷凍ストッカーの中を覗いては、「あれとこれを使ってこんな料理ができるナ、もし○人位のお客様がいらしたら今晩はこれを作って、これは最後まで残しておきたいし。。。う〜ん。。。」
 夏でもお客様の数はなかなか読めませんが、今の時期、12日からの連休にお天気が良ければもしかしたら朝日小屋も少し賑わうかもしれませんが、もし冷たい雨が霙(みぞれ)に変わるような日になれば今ご予約いただいているお客様も多分キャンセルになるでしょう。特に白馬岳からの“縦走組”でしたら白馬岳山頂で吹雪に遭うかもしれないという心配もあり、天候の悪化・急変には皆さんとても敏感です。
 ギリギリの食料しか持たないというのはやはり不安ですし、そうかといってあれもこれも残しておけば最後にはボッカで下ろすか、「ゴメンなさい!」と目をつぶるか、という選択を迫られることになります。
 ここしばらくは「朝日小屋定番メニュー」の肉ジャガ・天ぷら・豚カラ・マカロニサラダ等などは作っていません。お客様も少人数ですし、数が確定しないとなかなか調理を始められないからです。
 しかし、もちろん工夫して“手料理”でおもてなししようと頑張っています。今日の「朝日小屋日替わりメニュー」は、小アジの南蛮漬け・かぼちゃのバター煮・鶏肉と赤ピーマンのニンニクバター醤油風味炒め・お漬物各種(自家製)・オレンジ、そして皆さんに喜ばれたのは具だくさんの豚汁!
 それでも去年の今頃は、「食料の残り具合」よりも何よりも、「山を下りたくな〜い!」と言いつつ、頭と心が、小屋閉めまでの期間を目的も手段も定まらないまま何をどうしていいのかわからない毎日を過ごしていた事を思えば、1シーズンを経験して2シーズン目は少し進歩したかなぁと、自分で自分を観察する余裕も少し出てきたようです。
 小屋閉めのその日まで、“冷凍ストッカー”の中身は私を悩ませることと思いますが(笑)、山行の疲れを癒していただき、翌日の活力源になるような美味しいお食事をお出しするよう、あとしばらく頑張ります!!

追記
 もしこの後、朝日小屋にお泊りのご予定がありましたら、ぜひ『ご予約』をお願いいたします。天候その他でのやむを得ないキャンセルは、もちろん構いません。
 特にグループでおいでになられるお客様、どうぞ『要・ご予約』でお願いいたします。

寒いよぅ。。。

2002-10-04

 ウラシマツツジ   雪倉岳    02.9.26

 台風21号が通過した後、ここ数日富山県地方は日中の気温が30℃近い日が続いているとか。秋も深まって、身体が涼しい気候に慣れてきたところですから、「山が恋しいヨ」とかなり堪えているのは下界からの電話の主。
 ところが山の上は、寒い寒い。。。毎日ストーブのお世話にならない日はありません。日中の気温は6〜8℃くらいでそれ程ではなさそうですが、吹く風が本当に冷たいのです。今日の夕方など、朝日岳山頂では体感温度が氷点下だったのではないかと、蓮華温泉からお着きになったお客様が話しておられました。水が冷たくなって、早くも「手荒れの季節」がやって来たようです(笑)。
 先週の土曜日辺りには夕日が原の紅葉が見頃だったと、哲也や孝太が話していましたが、今日はもう恵振山(1,791m)山頂付近がきれいだということです。「ゆかりさんも見に行って来れば良いのに」とさんざん哲也と孝太に言われていたのに、何だかモタモタしていたら夕日が原の紅葉の盛りはちょっと過ぎてしまいました。
 急用で下界へ下りていた哲也も、今日のお昼頃4日振りに戻って来ました。
 明日の土曜日は、紅葉目当てのお客様で朝日小屋も少し賑やかになりそうです。

小屋閉めまであと9日…元気です!

2002-10-07

 賑わった週末、お客様も交えての団欒   02.10.5

 2日間日記を書きませんでしたので、「ゆかりは、またどうしているんだろう」と皆さん心配してくださっているでしょうか(笑)。
 紅葉も見頃だった週末は、常連さんや顔見知りの方たちをはじめ25名ほどのお客様。お天気もまずまずで、白馬岳からの縦走路、蓮華温泉への下山路、そして北又からのコースの恵振山付近と、どのルートも紅葉・黄葉を楽しんでいただけたようです。
 5日には、以前この日記の中でも紹介した、岳人6月号に栂海新道の記事を書いていらっしゃる平石武仁さん、山渓7月号に掲載された「山のマ・ダンナ」に選ばれた吉村由美子さんご夫妻(3月に負釣山でお会いした)、そして復活を果たした“週末従業員の由紀子さん等などが集まり大いに賑わいました。
 そして昨晩は、写真家で名ガイド(!?)の森下 恭さんと一緒に薪ストーブのそばでお鍋をつつきながら、またまた哲也・孝太と4人で夜遅くまでおしゃべりが続きました。
 営業終了まであと1週間、小屋閉めまであと9日となりました。小屋閉め準備も順調に進んでいます。今年は哲也と孝太が揃っているので、昨日はお天気の良い間に出来る外仕事もやってくれました。
 昨年より4日遅い下山ですが、まさかその日に雪が降りませんように。。。一面の“白銀の世界”も見てみたいような気がしますが、もしかなり積もるようなことがあれば大変だなぁ…と心配しています。

一段と寒くなって

2002-10-07

 恵振山山頂付近の見事な紅葉  photo by kouta

 昨日は、夜遅くなってから強い雨と風が吹き荒れました。
 先日の台風21号の時よりもずっと激しく、夜中には、テントを張っていたお客様が小屋に逃げ込んで来られるほどでした。
 さすがに、恐くはありませんでしたが、まさかそんな荒れ模様になるとは思っていませんでしたので、外回りが心配で「もし何かあったら哲也と孝太を起こさなくては」と思うと、なかなか眠れませんでした。

小屋閉めは『お祭り』だぁ!!

2002-10-09

 オヤマソバも、もっと枯れて。。。   鉢ヶ岳付近   02.9.26

 昨日は少し風邪気味で、一日中ゴロゴロしました。鼻がグスグスして寒気がしたので、小屋閉めに向けて用心しなくてはと、哲也と孝太には申し訳なく思いつつ何もしないで布団の中に潜っていました。お陰で、今日は少々後遺症を残しつつも、朝からゴソゴソと動けるまでに回復。
 今日で3日連続、お客様はゼロ。平日に加えて、お天気も悪かったので仕方ないですね。 
 今日の午前中、ガスと雨の晴れ間に少し姿を見せてくれた雪倉岳は、山頂付近が白くなっていましたから、きっと白馬岳も昨夜は雪が降ったことでしょう。白馬岳山頂と朝日小屋では標高差が約800m近くありますので、今日の朝日岳は冷たい雨が降っただけでした。
 今日から哲也と孝太は、小屋閉めに向けて一日一日スケジュールを立てて、寒い中でも外仕事を中心に予定をこなしてくれています。
 今日は、じっきーが入山して来てくれました。小屋閉めにどうしても参加できないので、都合をつけてやって来てくれました。夕食は4人で、冷蔵庫の残り物でホットプレートで「焼き焼きパーティー」。
 
 12日からの連休に入山して来たいという一般のお客様はもちろんのこと、身内・半身内・“自称”身内・“押しかけ”身内…(笑)等などの皆さんからの連絡も次々に入ってきています。どうやら連休はお天気も良さそうで、朝日小屋今シーズン最後の大賑わいになりそう…。
 その昔私の父が、「小屋のビールが余っているから、オイ、飲みに来いよ!」と誘ったとか誘わなかったとか(笑)…それを今でも正直に実行しようとしている奇特な輩も、大勢いらっしゃるようです(笑)。
 「山開き」と「小屋閉め」は、朝日小屋にとって『お祭り』みたいなものです。今年最後のお祭りがお天気に恵まれて、最高に盛り上がりますように。管理人も体調を整えて、お待ちしています!!