北アルプス 朝日小屋

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ダウラギリ事故、7日までの状況

2010-10-07

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朝日平にて  10.10.6

 本日(7日)、山本季生君のお姉様から電話が入りました。

 結果、現時点までの報告があり、また今後朝日小屋へは、状況報告について、愛知県の日プロガイド協会事務局から直接連絡が入ることになりました(メール送信による)。

 お姉様のお話では、留守家族の意向として、ご心配頂いている関係者やカンパにご協力頂いた皆様に、正確な情報をお伝えしたいということから私に連絡がありましたので、阿曽原温泉小屋・佐々木さんや関係者にお伝えし、そして皆様にも、一部になりますがお知らせ致します。

 また、「山本季生君を救援する会」が立ち上がり、富山県内を中心として多くの皆様から善意がお寄せ頂いていることに、山本君のご家族が深く感謝されている旨もお伝え願いたいということでした。

 以下、日プロガイド協会からの報告。(途中省略あり)

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 はじめに、
 日本の生活習慣から、各手続きや準備がビスターリ(ネパール語でゆっくりの意)で、状況報告から察すると「もっと早くできないのか」と思われることもありましょうが、ネパールの国政上どうやってもこれ以上できませんので、ご了解くださいますようお願い申し上げます。…メールの文面そのまま

 10月7日午前中、これまでの報告。

 捜索メンバーは、島田・平岡・花谷、シェルパ5名
 8~9日にヘリでの移動を含めてBC入り、以降捜索に入ること
 日数は、予備日を入れて数日間

 角谷・花谷は、新たな登山隊の許可を取得
 島田・平岡は、これまでのパーミッションを引き継ぐ

 なおネパールでは、ダサインが14~19日で行われる為、国内の行政・交通網がほとんどストップすること、そのことの影響でスケジュールが変更になる可能性もあり。

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 この他、日プロガイド協会からのメールからは、今回の事故では、現地日本大使館の大きなバックアップを受けていること、頻繁に連絡を取り合っていることなどが伝えられています。

 また、山本君のお姉様からのメールには、さとみさん(すずちゃん)からのメールが転送されていました。

 以下、さとみさん(すずちゃん)から山本君のお姉様に、6日に届いたメールです。

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 さとみです。今日はベースから戻った荷物を整理しています。写真が出てきたので送ります。
 当時着ていたものなど、捜索の手がかりとなる情報を集めます。

 (中略)

 写真、酸素を吸っているのが、ベースに残って頑張ってくれていた、島田さんです。
 本当に頑張ってくれています。

 それでは。よろしくお願いします。

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 事故発生以来ベースに残って捜索していた島田さんが、一旦カトマンズに戻った時に、同じへりに載せてBCの荷物が一部下げられて来たらしく、それをすずちゃんが整理しているとのこと。

 写真には、BCの中で楽しそうに談笑しているメンバーが写っていました。もちろん、山本君も。

 緊急な対策が求められる山岳遭難事故とはいえ、誰もが容易に入山し捜索に入れる現場でないことから、現地と関係者の様々な思いや行動が伝わって来ます。

 「山本君を救援する会」の活動も、新聞各社やテレビの報道により、広く皆様方にご承知頂く所となり、カンパが集まり始めています。本当に有難うございます。

 朝日小屋も小屋閉め直前となり、山本君に関する件を全てこの日記の中で掲載することも難しくなってくる状況にもありますが、なるべくご報告もしていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

 

ネパールの“すずちゃん”から

2010-10-08

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朝日小屋の受付横に、募金箱を置きました  10.10.6~

 今日、ネパールにいる山本季生君の奥さん・さとみさん(=すずちゃん)から、朝日小屋あてにメールが届きました。

 すずちゃんの思いもあり、また山本君のお姉様の了解も得ましたので、皆様にご紹介させて頂きます。

 以下、すずちゃんからのメール。

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Subject: カトマンズよりスズです

 連絡おそくなりました。いろいろとご心配おかけしております。

 皆様、お忙しい中、山本季生を救援する会のたちあげなどしていただいて、本当にありがとうございます。

 昨晩、レッコという、捜索に使うエコーの器械が届きました。これに関しても、たくさんの方の支援がありまして、実現しました。

 5日に現地入りして、私の目に映る限りでも、本当にたくさんの方が、毎日走り回って、準備を進めてくださっています。より確実に、そして、何より安全に捜索を行えるように、最善を尽くした、万全の体制を整えていただきました。

 いよいよ明日、フライトです。
 現地では、コスモトレック、日本大使館、そしてカトマンズにいる、ガイドの近藤健司さん、登山家の竹内洋岳さん、同志社大学山岳部の方々などからも、絶大なサポートいただいています。

 現場にむかってくださる、島田さん、平岡さん、花谷さん、シェルパのみなさん、強い信頼関係で、モチベーションをもってくださっています。

 この数日間を共に行動させていただいて、冷静な判断で、安全に行ってきますと言っていただき、私も強く信頼しています。
 私も微力ながら、役割を与えていただいて、前へ進むのみです。
 皆様からの支援が、この捜索隊です。

 通信環境が忙しくて、起こっていること、思っていることのすべてをお伝えする時間がなかなかもてなかったのですが、皆様には本当に感謝のひとことです。
 どうかこの捜索を遠くから見守っていてください。
 私のほうからも、出来る限り情報発信できるよう、環境整備中です。

 5日到着時の空港ピックアップの件ですが、迎えに来ていただいた---(注・私の友人)の友達のまわりに、報道がきてしまっていたので、(プラカードで名前がばれてしまいました。)本田さんの奥さん、島田さんもいましたので、声をかけることすらできませんでした。大変ご迷惑をおかけいたしました。滞在中に---と連絡をとって、お詫びしようと思っています。

 本当にありがとうございます。
 このメールは支援いただいている方々に発信していただいても大丈夫です。

 山本さとみ

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 募金箱の横に置いてある雑誌は、いずれも「岳人」別冊。

 2008年秋号には、山本季生君。私の肩を揉んでくれています。2007年撮影。
 2010年夏号には、山本さとみさん。急遽、モデルを頼まれて。2009年撮影。

 なお、同様の募金は、阿曽原温泉小屋でもお願いしております。
 皆様のご協力を、よろしくお願い致します。

紅葉の様子

2010-10-08

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朝日平にて  10.10.4

 朝日岳周辺の、紅葉の様子。

 私自身はなかなか小屋から動けず、自分の目で見ていないので恐縮ですが、お客様からの情報や見せて頂いた写真、また今日の昼休みにバイトの子たちが確認してきた様子などから。

 朝日岳周辺では、標高1,800m前後の付近で、紅葉がそろそろ見頃を迎えるようです。

 北又方面では、恵振山山頂付近。

 蓮華温泉方面では、吹き上げのコルから下、五輪の森周辺、花園三角点付近。

 雪倉岳・白馬岳方面では、水平道、小桜ヶ原周辺。

 栂海新道方面では、黒岩平の見事な紅葉も、そろそろ始まっているという情報。

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朝日平にて  10.10.4

 明日から始まる3連休、お天気が心配なところですが。

 朝日小屋は、小屋閉め直前、今シーズン最後のお客様をお迎えする準備を進めています。

 小屋の中も、そして心も、温かくして、お待ちしております。

 

小屋から、最後の日記

2010-10-12

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今朝の朝日平から見る、雪倉岳・白馬岳・旭岳   

 皆様、今シーズンも朝日小屋を可愛がってくださり、本当に有難うございました。

 2010年、シーズンもいよいよ終わりとなります。

 明日13日の午前中には小屋を閉め、下山を開始する予定。

 地元の皆さんが手伝いに来て下さり、今日は朝から小屋閉め作業がラストスパートです。

 午後からは、公衆電話が撤去され、遭対無線やインターネットも取り外されます。

 もうしばらくしたら水源地からの取水ホースも片付けられ、殆どの作業が夕方までに完了の段取りで進められています。

 本当に、有難うございました。

 里に下りたら、また近況報告など書きますね。

 また来シーズンも、朝日岳と朝日小屋をよろしくお願い致します。

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雪囲いも完了して、厳しい冬を超す準備が整う  

すずちゃんからの、メール

2010-10-16

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山本君と私   「岳人」2008年秋号掲載  2007年9月高桑信一さん撮影

 ダウラギリでの遭難事故発生以降、日プロからと山本季生君の妻・さとみさん(山仲間の通称・すずちゃん)から、関係者宛に1日1回以上、メールでの状況報告が一斉送信されてきています。

 昨日15日の夜も、カトマンズにいるすずちゃんからメールがありました。

 いろいろご心配頂いている皆様に、ひとつの区切りとしてご報告させて頂くべく、私たちが文章を書くより、すずちゃん自身が発信したメールでお知らせするほうがよいと判断し、すずちゃん本人の了解を得て、また「山本季生君を救援する会」世話人一同から皆様への感謝の気持ちその他、いろいろな想いを込めて、ここに掲載させて頂きます。

 以下、すずちゃんからのメール

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Subject: カトマンズより

現地家族会の山本です。

10月15日

 本日、カトマンズのスワヤンブナート寺院にて、本田大輔、田辺治、山本季生の葬儀をとりおこないました。

 本田さんのご家族、幸恵さんのお父さん、捜索隊の皆さん、シェルパの皆さん、コスモトレックの大津さんご夫妻、黒田誠さん、協力隊の藤原瑞穂さんに、ご参列いただきました。
 田辺、山本に関しましては、とり急ぎ遺影だけを用意して、気づいたら、彼らもひょっこり大ちゃんのお葬式にまじっていたような感じでした。

 世界遺産のお寺で、ラマ僧(イメージとしては、ダライラマです)を呼んでのチベット仏教式のお葬式は、山を愛した彼らにぴったりの、質素で素朴で、遠い遠い国での出来事のような、心の中に、なにか壮大なものを抱かせてくれるようなお葬式でした。

 大ちゃんは荼毘に付されました。家族と一緒に、日本へ帰ります。

 田辺さんと季生さんは、どこまでも山を求めているようなので、ダウラギリに眠ってもらいます。いかにも彼ららしい姿なのではないでしょうか。ダウラギリ峰が、彼らの世界一でっかい墓標だということで、かっこつきますね。

 みなさんここまで、毎日読んでいただいて、おつかれさまでした。

 私も今日は、終わっていくんだなあと感じて、とてもとても悲しかったです。
 あとは遠征隊の終了届けや隊荷の片付けなどがありますが、カトマンズの日々は、だんだん静かになっていきます。

 明日を最後の報告にしようと思います。ありがとうございました。

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 以上、山本さとみさん(すずちゃん)からのメールです。

 

「山本季生君を救援する会」から、皆様へ

2010-10-16

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真ん中、屈んでいるのが山本君  宇奈月・朝日遭対協合同訓練  白鳥山にて 10.3.14

「山本季生君を救援する会」から皆様へ、お礼と、合わせてご連絡です。

 ネパール・ヒマラヤの高峰ダウラギリ(8,167m)で日本人登山家3人が雪崩に巻き込まれ遭難した事故では、皆様には多大なご心配をお掛けし、そして温かいご支援を頂きまして、関係者の一員として心からお礼を申し上げる次第です。

 また私共が発足させた「山本季生君を救援する会」が呼び掛けましたカンパ活動について、大勢の皆様方から、多くの善意が寄せられておりますこと、本当に感謝致しております。

 既にご存知かと思いますが、3名の行方不明者のうち、長野県白馬村の本田大輔さんは13日に発見されましたが、残る田辺治隊長と山本季生君の2名については行方不明のまま、現地での捜索は14日打ち切られました。

 現場の状況から、2名の発見の可能性がかなり低いこと、そして現場上部の状態が悪くなってきていることなどからの判断だったとの報告がありました。

 以上のことから、「山本季生君を救援する会」として今後のカンパ活動をどうするかを話し合いましたが、当初の予定通り、今月末まで募金は継続することと致しました。

 これは、現地で天候の悪化によりヘリが飛べず待機するなどして捜索費用がかさんだこと、また費用負担が未だ確定せず相当な額の負担が見込まれること、などが理由です。

 私たちは、山本季生君ら3名の無事生還を信じて活動して参りましたが、残念ながら、現実的には雪崩に巻き込まれてからすでに20日近くが経ち、行方不明者の生存が絶望視されておりますので、今後積極的な募金活動はできませんが、事情を知って寄付して頂いた善意は、さとみさんたちご家族のために使いたいと考えております。

 山本君の妻・さとみさんについては、引き続きカトマンズにて頑張っておりますこと、お知らせしておきます。

 今日16日現在カトマンズは、ダサインというお祭りの最中で、日本の正月のようなもので、町は静かだそうです。

 さとみさんからは、19日になってこのお祭りがあけたら、隊の終了届けをしたり、行方不明を証明するものを発行してもらったり、荷物を日本へ送ったりする作業を進める予定になっているとの連絡も入りました。

 なお捜索経過・募金の集計結果等は、後日報告させて頂きますが、なにぶんにもかなり大勢の皆様方から善意が寄せられておりますので、ご報告は阿曽原温泉小屋と朝日小屋のHP上での記載が中心となりますこと、重ねてご了解願います。

 以上、よろしくお願い申し上げます。

                       「山本季生君を救援する会」世話人一同

                           阿曽原温泉小屋  佐々木 泉
                           朝日小屋     清水ゆかり
                           有志代表     佐伯 郁夫
                           友人代表     佐伯 妙子       

山本季生君とさとみさんからの、メッセージ

2010-10-17

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雨の中、「栂海新道」登山道整備工事の際の、山本季生君  07.10.1

 カトマンズのすずちゃんから、メールが届きました。

 皆さんに向けて、山本さとみの気持ちを書きたいという彼女の声がありましたので、ここにメール全文を掲載いたします。

 以下、すずちゃんからのメール

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Subject: カトマンズより

 ご支援くださった皆様へ

 現地家族会の山本です。
 今日は、山本季生の妻・さとみとして、今の思いを聞いていただけたらと思います。

 今回の捜索では、本当に多大なるご支援をいただきまして、ありがとうございました。本当に力になりました。
 そして、正直なところ、季生は好きに勝手に山に行き、皆様にご心配をおかけし、助けていただくなんて、身にあまる思いで、恥ずかしくも思いました。

 事故の一報のあとは、もう生きて帰ってくることはないだろうと思いましたが、生前、季生より「山で死んでしまったら、荼毘にふしてほしい」と言われていましたので、遺体はみつけてあげたいと、心の中で思っていました。私と家族の力だけでは、こんな大掛かりな捜索は、まずできませんでした。

 今回は現場の状況が厳しすぎて、季生の最後は見つけられませんでしたが、この捜索隊は、日本の山岳界をリードしていく強い男達の、そして彼らを信頼してついていってくれたシェルパ達の、見事なまでの連携プレー、知恵と力の集結でした。圧巻でした。感動しました。
 私の気持ちのうえでも、皆様からの支援に対しましても、やり残したことは何もありません。

 ベースキャンプから戻った季生の荷物をほどいていて、驚きました。
 8000m峰に向かう男の荷物とは思えないほど、いつもと変わらないものばかりでした。
 彼は本当にいつもつつましく、自分のことにはお金をかけず、自分の持っているだけのものを持って、山に向かって続いている彼の道を歩んで行っただけなんだなと思いました。
 こんな生き方もあるんですね。

 私も、また今ここから、彼の残していってくれたものの中に、いろんなことを乗り越えていくヒントをさがしつつ、彼の生きた証と共に、いっそう力強く、大切に、感謝しながら生きていきたいです。

 長くなりましたが、本当に本当にありがとうございました。

 カトマンズからの報告はこれで最後とさせていただきます。

 皆様に、一瞬でも長く、幸せを感じていられるときがありますように。
 そしてそれを、大切な人と共有できますように。

 合掌   山本さとみ

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 以上、山本季生君の妻・さとみさんからのメールです。

 皆様には、いろいろご支援頂き、本当に有難うございました。
 「山本季生君を救援する会」からも、深く深くお礼申し上げます。

 私たち世話人一同は、10月末までのカンパ活動を続けながら、ネパールから帰国する山本季生君のご両親やさとみさんたちご家族を待ち、今後の対応を決めたいと考えております。

 諸々のご報告が、もう少し後になるかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

 本当に、有難うございました。

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「栂海新道」で、彼が携わった登山道整備と、一緒に頑張った仲間たち  07.10.1