北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

前の記事 次の記事

ブナ立尾根〜烏帽子小屋〜南沢岳(往復)

2003-11-21

烏帽子岳(左)と南沢岳。そしてその間から奥には、立山の山並み   03.10.30

 烏帽子岳(左)と南沢岳。そしてその間から奥には、立山の山並み   03.10.30

 10月30日。降雪の予報は大ハズレで、どこまでも青空が広がる秋晴れ。
 となると…新雪で水を作るという計画がダメになったため、結局は3日間の二人分の水を7リットル近く担ぎ上げることに。2泊3日の山行で冬期小屋に泊まるわけだから、いくら担げない私でも全部を森下さんに持ってもらうわけにはいかず、シュラフの他に軽めの食料やらを持って、やっぱりそれなりの荷物になりました。

 「初めての山」というのは、やはりかなりの緊張感があります。それでも、登り口にあった“裏銀座コース・入口”の看板に、何故かえらく感激してしまった私。
 「北アルプス3大急登」…考えてみれば、01年には急登で名高い“笠新道”も登っているわけだから、何とかなるだろうと自分に言い聞かせながらの登り始めとなりました。
 いつもながら「ゆっくり、ゆっくり」と呪文のように繰り返しながら、ペースを守って歩きます。北又からの恵振山の急坂と比べてどうかしら、これが3大急登なんだ、そう考えながら登っていくと案外知らないうちに高度を稼いでいけたように思います。
 すでに葉を落とした冬枯れのブナの木立ちの中を行きますが、ふっと気付くといつの間にか辺りは針葉樹林帯に代わっています。途中からは唐沢岳や七倉岳がよく見えるようになり、しばらく行くとダケカンバの幹が聳えてきて青空に枝を伸ばしていました。
 稜線が近づくようになると、登山道にも雪が付いていました。最初の軽快なペースもそろそろダウンしそうだな、最後まで持つだろうかと思い始めた頃、尾根道を登りきって稜線に上がることが出来ました。
 途中で昼食をとっても、濁沢の登り口からの所要時間は約4時間半少々。遅足の私でも、ほぼコースタイム通りでした。

 「ひと休みしたら、南沢岳へ行って来ましょう」
 「はぁ。。。」
 いつもだったら小屋へ着けばその日の行動は終了するのですが、今回は撮影が目的の森下さんでしたから、夕照の時間に合わせて南沢岳まで往復するとのこと。
 辿り着いた烏帽子小屋の冬期小屋では、シュラフを広げたり食器を出したり灯かりの準備をしたりして、後はヘッドランプと雨具や防寒具などを用意して南沢岳へ向かうことになりました。

 快晴とはいえ、10月末の2,600mを超える北アルプス。数日前に降ったであろう積雪は、稜線では深い所で20cm以上あり、また午後3時を過ぎていましたから日陰では雪もガチガチに凍っていました。
 「烏帽子岳の頂上はどうしますか?」…雪の無い時期なら、クサリの連続する登下降も大丈夫だと思いますが、雪が付き気温もグッと下がってきた今回は、烏帽子岳山頂は諦めることに。
 陽が傾き始めた頃、南沢岳に到着しました。早速、森下さんは撮影開始。
 陽が沈む直前、夕照に映える七倉岳、船窪岳、そして針ノ木岳、遠く連なる北アルプス・後立山連峰の峰々。はるか遠くには白馬岳までが確認することが出来ました。
 そして、黒部湖を挟んでは立山連峰が連なります。赤牛岳の向こうには薬師岳、そして立山・剱岳の山並み。
 私も寒さで震えながら、沈んでいく夕陽とどこまでも連なる山々にいつまでも見入っていました。
 烏帽子小屋までの帰路は、陽も沈んでしまってさすがに真っ暗。片道約1時間半近い道のりは、少しの月明かりとヘッドランプを頼りの行動となりましたが、6時半近く無事に小屋に戻りました。
 初めての「冬期小屋」は思ったよりなかなか快適で、夕食は例によって森下さん得意のキムチ鍋。重いのであまり持てなかったアルコールですが、少々の梅酒を口にし、キムチ鍋で冷え切った身体を温めて、早々シュラフにもぐり込みました。