北アルプス 朝日小屋

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下山君遭難、経過報告など

2013-06-04

写真
雪倉岳・赤男山・朝日岳の眺め 蓮華温泉付近、ヒワ平ゲート前より  2013.5.25

 ご報告が遅くなり、申し訳ありません。 

 今回の下山 隆君の遭難にあたり、全国から大勢の皆様方より、本当に温かい励ましを頂きましたこと、ご家族の皆様共々、心より深く感謝申し上げます。

 ここに、今回の遭難について、簡単ではありますが経過報告をさせて頂きます。

 

下山 隆 52歳 横浜市在住 富山県朝日町出身 元朝日小屋アルバイト

2013.4.16

 栂池高原スキー場より、単独で入山
 家族には「遅くとも、21日には帰る」と伝える。
 登山届では、小蓮華・雪倉岳・朝日岳などを廻り、蓮華温泉へ下山予定
 当日の天候は、曇り晴れ、ただしかなり風が強かった
 雪は、「ストップ雪」

4.21

 下山予定日となったので、奥様が朝のうち蓮華温泉へ連絡するも、立ち寄った形跡なし
 ご家族が、長野県大町警察署へ、遭難届・捜索願を出す

4.23 および 25

 長野・新潟・富山の3県警よりヘリコプター出動し、空からの捜索を行なうが、手掛かりなし
 入山より日数が経っていること、またその間にかなりの降雪があったことなどから、警察による下山君の為だけの捜索は打ち切りとなる。
 この後は、通常のパトロールの中での捜索は続け、遺留品などが見つかれば捜索を再開することもあるという方針が出される。

4.27~5.5

 栂池ロープウエイ終点駅にて、手掛かりを求めてビラ撒き(ご家族・友人)

5.5

 民間ヘリにて、空からの捜索
 大町警察署・小谷村遭対協より隊員に搭乗してもらい、本人が計画していたルート上を飛んでもらうが、手掛かりなし。
 家族および関係者もヘリに搭乗し、空から様子を確認する。  

5.7~

 高校山岳部恩師や、同級生、会社の同僚、そして朝日小屋清水などが中心となり、『下山君救援のためのカンパ活動』を始める。

5.15 am11:30頃

 蓮華温泉近くの沢で、蓮華温泉ロッジの女性従業員により発見され、新潟県警へりにて収容される。
 発見された場所は、蓮華温泉から徒歩30分ほどの場所。夏道上でない、「天狗の庭」下部の沢の中。
 死因は、外傷性ショック死。骨盤を骨折していた。
 スキー靴は履いており、斜面の上部にスキー板は残されていた。

検 証

糸魚川警察署の見解

 下山君は、滑落や雪崩などの事故に遭ったのではないか、とみている。
 残された食料などから考えると、事故に遭ったのは入山当日と考えられる。

ルート変更について

 入山当日の天候は、曇り晴れ。天狗原付近では、視界も良好だったことが確認されている。
 しかし、風はかなり強かったということで白馬大池まで登った下山君は、単独でもあることから、先に進むことを変更し、日程にも余裕があったことなどから「安全策」として、一旦蓮華温泉へ滑り込むことを選択したのではないか。

 今回下山君は、結果的には登山届とは違ったルートを歩いたことになった。

滑落・雪崩について

 本人が発見されたのは、デブリの末端。
 本人が転倒して雪崩を起こしたのか、足元から崩れたのかは不明だが、ビンディングがスキーから剥がれて、スキー側でなく、靴側に付いていたことなどから、かなり強い抵抗や衝撃があったものと考えられる。
 どの地点で、どのような雪崩に遭遇したかは、全く不明。
 しかし、本人が発見された沢でいえば、4月時点では雪崩の危険性がある沢だということである。

 以上、ごく簡単ではありますが、本人入山から発見までを経過報告させて頂きました。

追記として

 ご家族の皆様や友人・知人で、関係機関への挨拶回りやお願いにも何度も出掛けました。
 カンパ活動をするにあたり、関係者での打ち合わせなども、数回行いました。

 そして発見前日の5月14日には、糸魚川市内において、蓮華温泉の田原オーナーや白馬村のガイドさん、その他関係者が集まり、今後の捜索方針について話し合いを持ちました。
 以降の空からの捜索や地上からの捜索について確認をし、民間ヘリでの捜索日時を決定したところでした。

 できれば生きて帰ってきてほしかったことは、もちろんです。

 しかし、見つけてもらって、見つかってくれて、本当に良かったと思います。

 励まして下さった皆様、見守って下さった皆様、そして尽力くださった関係者の皆様には、言い尽くせぬくらいの感謝を、重ねて申し上げます。

 

 

カンパ活動のご報告とお礼

2013-06-04

写真
抜けるような青空の中、左奥に見えるのが朝日岳 ヒワ平より 2013.5.25

『下山 隆君を救援する会』より、

カンパ活動のご報告とお礼

 今回は、下山君を救出するべくカンパのお願いをしましたところ、全国の皆様から多大なご支援を頂きまして、本当に有難うございました。

 5月7日から始めたカンパ活動でしたが、5月15日下山君発見により終了させて頂きました。

 5月末日にて、取りまとめをさせて頂きましたので、その結果と使途について、ご報告させて頂きます。

 カンパの使い道その他につきましては、5月中に、ご家族をはじめ、発起人などの関係者が集まり話し合いが持たれました。

 その中で、早期の救出が出来たことに感謝するとともに、集まったお金の一部を『山岳遭難防止』に役立ててほしいという話が、ご家族からありました。  

 関係者でも議論をした結果、また関係各機関とも協議した結果、

 今回の捜索にあたり尽力頂いた「長野県小谷村遭難対策協議会」と、

 下山君の出身であります朝日町の「朝日岳方面山岳遭難対策協議会」に

 『山岳遭難防止に役立てて頂きたい』という思いで、一部を寄付させて頂くことになりました。

 集まったカンパは、全体で300万円を超える金額となりました。

 この中から、2箇所の「遭難対策協議会」に寄付させて頂き、残りは全額下山君のご家族にお渡しいたしたところであります。

 本来でしたら、ご家族そして発起人から、カンパ頂いた皆々様に、お一人お一人お礼の言葉を申し上げるべきではありますが、何分見ず知らずの方を含め大勢の皆様からのカンパでありましたので、当初予定通り、朝日小屋ホームページでのご挨拶に代えさせて頂くことをお許し願います。

 本当に、有難うございました。

 発起人
 高校山岳部恩師 辻 斉
 朝日小屋管理人 清水ゆかり
 会社・同僚   斉藤 慎一
 同 級 生   住吉 雅人
 同 級 生   下澤 博之

重ねて、お礼

 短期間の活動であり、大きな山岳会に所属をしていなかった「岳人」「山や」の彼ではありましたが、同級生や会社関係の皆様、また朝日小屋に思いを寄せてくださっている皆々様のお蔭で、本当に大きなカンパを集めて頂き、ご家族関係者ともに、何と感謝申し上げてよいか、本当に有難く思います。

 カンパ活動の最中も、「早く見つかればいいですね」「奥様や子どもさんたちに、頑張ってと伝えて」「下山君は知らないけれど、同じ山をやる人間として少しでも力になれたら」などなど、多くの励ましのお言葉を頂きました。

 そんな皆様の声に押されるようにして、下山君は見つけられたのだと思っています。

 カンパ活動については、いろいろなご意見があるかと思います。

 また、カンパ活動を始めて1週間程で彼が見つかりましたので、当初の「救援・救出活動」目的の使途へのカンパが曖昧になる部分もあります。

 しかし、捜索範囲が広くて、発見までは長期間、そして多額の費用が予想されたため、ご家族の皆様は本当に「どうしたらいいか」という思いが日に日に強くなっていったかと思います。

 実際、救助用の保険に入っていましたので、民間ヘリやレスキューに係る費用は、保険で賄える部分もありましたが、その他保険では適用されない細かい費用などの捻出など、諸々あるかと考えます。

 という中で、「救援・救出活動」目的に使われる部分はわずかではありましたが、今後のご家族の皆様に役立てて頂けたらという思いを察して頂ければ、幸いです。

 本当に、有難うございました。

現場へ…

2013-06-04

写真
それぞれの思いを胸に、現場へ… 蓮華温泉近くで  2013.5.25

 実は、5月25日、下山君が発見された現場へ行って来ました。

 その数日前、蓮華温泉ロッジ従業員の方が、残置されていた両方のスキー板、それぞれ片方ずつのストックやかんじき等を回収して来てくださっていたのでした。

 「今なら、雪の上を歩いて現場まで行けますよ。行って来られますか?」

 蓮華温泉ロッジの方からのお話もあり、急遽横浜からいらっしゃったご家族の皆さんたちと、現場を訪れることができました。

 現場付近では、残された片方ずつのストックやかんじきは見つけられませんでしたが、サングラスの蔓の部分やビンディングの一部を発見することが出来ました。

 蓮華温泉からは、歩いて登り50分程、下りは30分程だったでしょうか。スキーで下れば、5分か10分程。
 彼は、本当にすぐそこまで、来ていたのですね。

   

小屋開けまで、20日弱…!!!

2013-06-04

写真
雪解け進む、朝日岳  2013.5.23

 上の写真も、もう10日前の様子です。
 あれからも10日以上経ちましたし、好天で気温の高い日が続いていますから、岳の上ではもっと雪解けが進んでいると思われます。

 この1か月以上、いろんなことがありました。

 あっという間に6月、小屋開けが迫って来ました。

 この週末には、偵察登山で小屋まで行って来ます。

 とにかく、いつものように『気が付けば、お尻に、火!』となり、がむしゃらに小屋開け準備に突入です…(やっぱり!?)(苦笑)

 ガンバリマス!!!

奥様から、お礼の言葉

2013-06-05

写真
鉢ヶ岳、雪倉岳方面を見る  捜索の民間ヘリから  2013.5.5

 遭難した下山 隆君の奥様から、皆様へお礼の言葉が届きましたので、ここに掲載いたします。

 以下、すべて原文のまま。 

皆様へ

 本当にありがとうございました。
 皆様のお蔭で、夫を連れて帰ることができました。

 「どこかで救助を待っていてほしい、生きていてほしい」、夫が還らぬ姿で発見されるまでずっと願いづづけていました。
 捜索の範囲があまりにも広く、何の手がかりも得られないまま、時間だけが過ぎていきました。
 このまま見つけることができないかもと不安で不安でたまらない気持ちでいる中、有志の方々が行ってくださった捜索費用のためのカンパ活動は希望であり、私たち家族の支えでもありました。
 「一回でも多く、ヘリを飛ばそうね」、「地上からの捜索もやろう」、そう言ってくださることが本当にうれしかったです。
 たくさんの方々のご厚意に、心より感謝しております。

 先日、夫が一か月の間眠っていた場所に行ってきました。
 美しい山々を見て、清々しい空気を肌で感じてきました。まだまだ心の整理はつきそうにありませんが、しっかりと前を向いて少しづつ進んでいけたらと思っています。

 今回頂いたカンパの一部を遭難防止のために何かお役立ていただけたらと思い、大変お世話になった長野県小谷村の遭難対策協議会様と、夫の故郷である富山県朝日町の遭難対策協議会様へ寄付させていただくことにいたしました。
 たくさんの方が、何より安全に山を楽しまれることを願っております。

 最後になりましたが、
 夫の捜索にあたってくださった皆様、
 温かいお気持ちを寄せてくださった皆様、
 情報提供、情報発信等ご協力くださった皆様、
 私たち家族をサポートしてくださった皆様、
 本当に本当にありがとうございました。

                           平成25年6月 下山 直子

偵察登山へ

2013-06-09

写真
偵察を終え、いざ下山!  2013.6.9

 8日(土)~1泊で、シーズンイン前の「偵察登山」に行って来ました。

 北又からの往復でしたが、残雪量は場所によって違いはありますが、今のところ「概ね、例年並み」といったところでしょうか。
 好天が続いているので順調に雪解けも進んでいるようですが、けっして少ないということはないようです。

 小屋の中は大小の動物たちに荒らされることもなく、昨シーズンの終わりに整理していったままの状態で綺麗でしたし、小屋外も風雪による大きな損傷はなく、とりあえずホッとしました。

 この後は、2週間後に迫った小屋開け・シーズンスタートに向け、準備も大詰めを迎えます。

 ガンバリマス!!!

写真
オスの雷鳥  小屋の周りで  2013.6.8

ドタドタ、バタバタ…

2013-06-12

写真
恥ずかしながら、資料が散乱したままの机の上  2013.6.11

 偵察登山から帰って、小屋開け準備も追い込みにかかっています。

 とにもかくにも、ヘリコプターでの荷揚げの準備・品物や材料の発注を済まさなければ。。。

 今日で、とりあえず(一応)連絡は終わりましたが、まだまだ忘れ物はないかの確認が続きます。

 そして、これからは連日の買い出しも。

写真
あっちもこっちも、散らかりっぱなしで  2013.6.11

 そんな中、娘が来てくれて「カメ吉」もお引越し。
 小屋閉めまでの4か月間預かってもらいます。シーズンイン前の恒例となりました。

写真
引っ越し前に、甲羅のお掃除をしてもらう「カメ吉」  2013.5.12

 連日、真夏のような暑さの中、やらなくてはいけないことを全て終わらせて、ようやく小屋開けを迎えることが出来ます。

 何をしていても、忙しい!!!

手伝ってもらって、荷造り

2013-06-16

写真
今年小屋に上げていく、布団類ほか  2013.6.16

 いよいよ、小屋開けまであと1週間。

 準備もそろそろ、ラストスパート(!?)

 と言いつつ、いつも最後までドタバタしていますが…。

 今日は、ヒダさんとサワが手伝ってくれて、荷造り。

 大きな荷物の殆どは、食材・食料品や燃料等などですが、それはヘリポートでの「モッコ作り」当日に業者さんが直接運び入れてくださるのです。

 連絡所に集まってくるのは、その他の業者さんから宅急便で届く品物。
 そして私が買い出してくる、こまごまとして、諸々雑多な物たち。

 これを段ボールに入れて梱包するのだって、ひと仕事です。

 一人でしていると気の遠くなるような仕事も、仲間のみんなが手伝ってくれるので本当に助かります。

 とにかく、買い忘れがないように…。「あっ、忘れた!」では済まされませんから。

 今年も、登山道整備工事の業者さんたちが入っていらっしゃるので、お客様の他に、それを見越した数量のものを用意しなくてはいけません。

 大きな山小屋さんや、お隣さんのある小屋のように、シーズン中に何度もヘリコプターを飛ばすことが出来る山小屋でないので、毎年本当に『一発勝負!』的な感覚で品物を揃えます。

 まだまだ、買い残しがあるはず…。

 明日からも、もうしばらく買い出しに追われることになりそうです。

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「朝日神社」用の、お神酒やしめ縄も持っていきます!
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玄関先にも、まだこれから品物が届きます!
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寒くなる秋用に、こたつも持っていきます!
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今年のバンダナやTシャツも届きました!