北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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『夢中』

2002-04-05

   登山道脇で可憐に咲く、イワウチワ

 亡くなった父は今頃の時期に何をしていたかというと、ほとんど毎日のように「山菜採り」に出掛けていました。父が採って来るゼンマイやワラビやウド、コゴミやススタケ…等など、どれも太くて柔らかくて、どこの誰にも負けないくらいの収穫量もありました。朝早く出掛けて夕方遅くに帰って来て、夜通しその山ほどの山菜を始末し、また次の日イソイソと出掛ける父の姿。。。本当に少年のように生き生きしていたと思います。
 そんな父と「山モン採り」に出掛けたのは小さい頃の一時期だけでしたが、どうやら私にもその血が流れているらしく、一昨年の朝日岳山開きの折に、ある場所で木の枝にしがみ付きながら必死に山菜を採る私の姿に、思わず主治医のY先生が「清水さん、それ以上は危ないから!」と後ろから叫ばれたこともありました(笑)。
 そんな私が昨シーズンが終って山を降りてから、生まれて初めて手にした「一眼レフカメラ」。ファインダーの中に今まで見たことのない不思議な世界の広がりを感じて、毎回重い道具一式を背負って山を歩いてもほとんど苦にならないから、我ながらただただ不思議…。
 冬の間は少し無理をして、練習のつもりでカメラを片手に被写体を探したこともあったけれど、春になって負釣山の急な斜面を登って、薄ピンク色の何とも可憐に咲くイワウチワや青空に聳える朝日岳の姿を撮っている今の自分は、それこそただ「夢中」…。
 
 『夢中』。。。文字通り「夢の中」

春は、あまりに駆け足で??

2002-04-05

  負釣山・4合目付近   

 負釣山登山口までの林道も例年にない早さで雪が融け、今日はもう駐車場まで車で入ることが出来ました。また登山道の残雪も全く気にならないほどでした。
 昨晩の我が家の夕食の食卓には、「タラの芽」と「孟宗竹のタケノコ」の天ぷらが並びました。今年の初モノ…
 清水家の裏庭には孟宗竹の竹薮が少しあるのですが、結婚して20年、こんなに早くタケノコを口にしたのは、もちろん初めてです。20年前なら5月の連休になってから、近年でも4月末にならないとタケノコは出ませんでした。
 4月4日にタケノコが顔を出すとは。。。タケノコの天ぷらに、さしみそして若竹汁に、と初モノを美味しく頂いたものの、心中はいささか複雑!?

今日・明日は美ヶ原へ

2002-04-08

   朝焼けの様子  山影は、雪倉岳・白馬岳・旭岳  

 昨日は一日中、ハウスの中の稚苗の「子守り」。
 育苗器から出したばかりなので、少し気を使いました。曇ったり、カーッと晴れたりといったお天気だったので、何度もハウスの中の温度を点検に。
 さてさて今日・明日は、長野県の美ヶ原へ出掛けて来ます。写真家の増村さんの写真教室へ行って来ます。何しろまだまだいろいろなことがチンプンカンプンですので(笑)、最近撮った写真も持参して、批評していただいたり助言をいただいたりして、夏山へ上る前に少しでもカメラの腕前が上るよう、勉強してきます。
 では、行って来ます。   

写真教室に行って来ました!

2002-04-10

“暖黄梅”を題材に
     花のクローズアップ写真の撮り方を説明される増村さん 

 8〜9日、信州・美ヶ原高原での増村征夫さんの写真教室に参加して来ました。昨年の12月に2泊で参加した時には、生まれて初めて手にした一眼レフカメラを持ってかなりオドオドしながら、まるで「入学式の日のかわいい小学一年生」の雰囲気でしたが(笑)、今回は春になって山を歩いて少し花の写真を撮り始めてからの参加でしたので、「さあ、今日から少しづつお勉強を始めましょう、机の上の教科書を開いて…」という様子の私でした。
 今回は、末妹の弥生とお友達の朋子さんも一緒(私はお勉強、彼女達は気ままな旅)。8日はお天気が良く、電車の中から見える大糸線沿線の新緑を眺めたり、大町を過ぎた辺りから松本までの北アルプスの山々の雄大な姿に感嘆の声を上げたり、なかなか楽しい女3人旅でした。
 松本駅までは美ヶ原・王ヶ頭ホテルのバスが迎えに来てくれて、そこで穂高町のわさび園へ撮影に出掛けていた増村さん他写真教室のメンバーと合流し、桜と常念岳などが撮れないか、高台のポイントを探して撮影したりしながら宿へと向かいました。
 あいにく夕方からお天気が崩れてきたので、残念ながら、奥穂高岳付近に沈むという夕照の撮影は殆ど出来ませんでした。
 しかし、夕食後恒例のスライドを使った写真教室では、花の写真の撮り方を中心に増村さんの講義を聴きました。前回は、写真の専門用語はもちろん、とにかく何から何まで全くのチンプンカンプンでしたが、今回は分からないなりにも「こういう意味かな、あの場面の事かしら」と自分の中で考えることが出来ました。
 でもまだまだ私の中では、文章を書く事のほうがよっぽど簡単、「本当に写真はムズカシ〜イ」…です(笑)!!

真夜中の…「特別講義」(!?)

2002-04-10

  穂高町のわさび園で 朋子さん・弥生と“わさびソフト”を食べる   photo by masumura
 
 増村さんの写真教室のスケジュールはかなりハード、朝から晩まで「写真三昧」です。朝焼けを撮る準備が暗がりから始まって、一日中撮影をして夕食後もスライドを使っての講義があるのですが、今回は私も、城山で撮ったものや負釣山へ行った時に写したイワウチワの写真などを少し見ていただこうと思ってスリーブ仕上げのポジを持参しました。
 増村さんが初めて朝日岳においでになった時にはまだ中学生だった末妹ですが、彼女や朋子さんも一緒でしたので、今回は嬉しいことにお部屋でお酒を飲みながらの「特別講義・個人レッスン」が実現しました。
 とにかく私は、久し振りにお会いした増村さんに自分の撮った写真を見ていただきたくてウキウキしていました。何て言ってくださるかなぁ、ふふ。…ところが。
 私の撮った写真の評価はどうだったかって!?。。。もう、聞かないで下さいょぉ。。。
 ピンクの花が可愛くて夢中で撮ったイワウチワの写真、「少し自信があった」なんて図々しい事は決して言いませんが、それでも何か嬉しくなるようなコメントでも貰えるかと心の中で多少期待もしていたのですが(笑)…。 
 とんでもない!!…「どうですか?」の私の声なんかまるで聞こえなかったようで(笑)、ただただ無言の写真家・増村さん。。。という事は、『評価以前』の作品だったらしい(爆笑)。
 小学生の頃から国語は大好き、でも図画工作は苦手。写生大会で絵を描くのは苦痛だけどとりあえず遠足気分で参加していたような私ですから、「美的センス」が無いのは良く分かっているのですが。。。
 もちろん、充分な被写体の観察から始まって、背景や構図に細心の注意を払ったり、明暗の対比や被写界深度に気を配ったりという写真の技術が全く出来ていないという点も問題です。負釣山で一面に咲くイワウチワを見て、あのピンクの可憐な花を撮りたかった気持ちはあるのだけれど、「わぁカワイイ、パシャ!」だけでは、感動して昂ぶる私の気持ちはそのまま全部伝わるわけもありません。
 そういえば私は、この「管理人日記」をはじめ文章を書いたり人に話をする時には必ず、何を書こうか話そうか、『主題』となるものを最初にパシッと決めることにしています。その上でなるべく分かり易く、起承転結や説明部分にも細かく気を配りながら、内容を練り上げるようにします。もちろん、伝えたい自分の気持ちを一番分かってもらえるようにするにはどうすれば良いかを考えながら、枝葉や肉になる部分を当てはめていく作業を知らず知らずに進めているのだと思います。
 『…でもゆかりさん、あれだけステキな(?)文章が書けるんだから、写真も同じです。表現の方法や手段に違いがあるけれど、自分が何を伝えたいのか、どんな気持ちを伝えたいのか、どう表現するのかをはっきりさせることが重要です。大切なのは、情熱や想い、気迫なのではないでしょうか』
 増村さんからは殆どひと言もお褒めの言葉はいただけませんでしたが、こんな事でくじけるような私じゃない(!?)。まだまだう〜んと勉強が足りないという事です。そんなホンの数ヶ月で、「写真を撮っています」なんて顔が出来るわけもありません(笑)。
 「初志貫徹」…気持ちも新たに、頑張らなくっちゃ!!

松本・美ヶ原から穂高町、大町市へ

2002-04-10

  大町山岳博物館にて    “西條八十”の詩の前で 

 お昼頃に美ヶ原をあとにして松本市内へ出てから、増村さんに案内していただいて穂高町のわさび園や「早春譜」の石碑を廻り、また大町市にある「市立大町山岳博物館」へも行って来ました。
 「美術館なども訪ねてみて、“目を養う”ことも大切ですよ」と、前日の特別講義で聞かされていた私は、特別展で展示されていた大町ゆかりの美術家たちの絵画作品の前では、いつになく神妙な顔で見入っていたようです。

亡き父が好きだった山、憧れの初雪山へ

2002-04-15

  初雪山頂上にて、強風に飛ばされそうになりながら記念写真 
                                photo by ターさん

 14日(日)、初雪山(はつゆきやま・1,610m)へ行って来ました。
 いつもならこの日記の中で「明日は○○へ」とお知らせするのですが、今回の山行への参加はかなり急に決まったのでその余裕がありませんでしたし、また正直言って本当に頂上を踏めるかどうかわからなかったので、実は内緒にしていたわけです(笑)。
 メンバーは、花じいさんこと石澤さん、ターさんこと高田さん、シュンちゃん、主治医のY先生、由起子さん、そして私の6名。
 早朝5時に朝日インターで待ち合わせ。国道8号線を折れて境川を遡り、大平川の川沿いに境川第2発電所奥の車の行き止まりまで走り、そこから歩き出したのは午前5時40分。事前の情報では、残雪の状態次第ではもしかしたら林道歩きにかなりの時間を要するかもしれないという事だったので、遅速の私がいるので取り付きまで2時間を覚悟していましたが、思いのほか雪融けが早く、川黒谷出会い直前の山道(作業道?)に取り付くまでは約1時間。
 杉の木立ちを抜け、イワウチワが両側に咲き揃うあまり踏まれていない山道をしばらく行くと、雑木の林がいつしか木洩れ陽の射すブナの林に変わります。たいした急登でもなく、横に広い斜面をツボ足で快適に抜けていきます。
 しかし、前を行くのは花じいさん・ターさん・Y先生・由起子さんの健脚4人組。最後尾は私と、私をサポートしてくれるシュンちゃん。「あくまでマイペース(でしか歩けない)」の私を気遣いながら登ってくれた4人でしたが、休憩する彼らにやっと追いついたと思ったら、さあ出発(笑)。…でも私は適当に呼吸を整えながらの自分歩きなので、それでもどうにか付いていくことが出来ました。
 途中からは初雪山の頂上を眺めながらあまりに快適な登りが続くので、「ナンカ、すごく大変な山だって聞いてきたけど、藪こぎもないし(これはルート取りが最良だった為)、こんなもんで頂上まで行ってしまうのかしら??」と不思議になって来ました。
 ところが標高が1,000m前後になった頃から、かなり強い風が吹いて来ました。結構身体がふらつくような強風に、何やら怪しい気配と少々不安な気持ち。。。
 どうやら快適な山歩きを楽しませてくれたブナ林の上端まで行った辺りでふっと上を見上げると、かなりの急斜面です。『そうか、これか。。。』
 ルート取りは男性4人で相談しながら進みましたが、リーダーの花じいさんの的確な判断で、斜面の左側(犬ヶ岳側)は雪の状態が怪しいので避けることにして、頂上に向かって右の斜面をトラバースしながら少し巻き、その後しばらく直登しました。ただでさえかなりの急登に恐怖心をこらえながら進んでいるのに、その上強風にあおられて気持ちまでフラフラしそうになりましたが、とにかく上へ行くしかないので、黙々と前進あるのみ。
 一番危険な直登の箇所を終えて、ブッシュに出ました。そこを犬ヶ岳側に巻こうとしましたが、やはり雪の状態がどうも良くないようなので、少々困難を覚悟してブッシュを抜けることにしました。滑落の恐怖はないものの、男性に比べて軽量なのと腕の力がないからか、結構必死でした。
 何とかブッシュも抜けてホッとしましたが、いい加減お腹も空いてきたのか、力が入りません。無線中継用のタワーを目指してあとひと息…。
 ところが…目の前にドーンと朝日岳の勇姿が飛び込んで来ました。朝日小屋の三角屋根もはっきり見えます。もう、もう少しで涙がポロリ…本当に「感動もの」でした。こんなに近くに見えるんだ。。。頂上着は午前11時50分、取り付きから約5時間あまり。
 強風に飛ばされそうになりながらゆっくり感慨に浸る間もなく頂上を辞し、少し風のゆるい場所まで下がって昼食にしました。あの急斜面を降りるんだと思うと、そうそうアルコールをグビグビ飲むわけにもいきませんが、持って行ったご馳走を広げて「とうとう初雪山に来たんだね」と、やっぱりみんなで乾杯!!
 お楽しみのお昼が終わり、さあ、とにかくあの急斜面を滑落せずに降りなければいけません。前を行く人がステップを切ってくれますが、それでも気が抜けませんからしっかり一歩一歩確実に踵で踏みしめながら油断せずに下がりました。
 しかし、しばらく続く急斜面を過ぎてしまえば、あとは雪がちょうど程よくクサっていましたので、転がるように走るように降りてきました。途中で「ナンカ、あまりに早く降りてしまうのももったいないネ。もう一度戻ろうか。でもあの急斜面はもういいからやっぱり帰ろう」等とおしゃべりしながら、とうとう降りてしまいました。
 頂上では他にもいくつかのパーティーに出会いましたが、偶然にも昨シーズン朝日小屋においでになった方たちが何人もいらっしゃったり、スキーを楽しんでいる若いグループもいました。
 下山は、頂上から取り付きまで約1時間50分(かなり早かった)、林道歩きが約1時間。午後4時半車へと戻ることができました。
 まさか今回、父が大好きだった山・初雪山へ行けるとは思ってもいませんでしたがそのチャンスに恵まれ、連れていって下さった花じいさん・ターさんはじめ皆さん、本当にありがとうございました。

好条件に恵まれ、メンバーに恵まれ…

2002-04-15

快適な春山を楽しむ、しかしこの後恐怖の直登が待っていた  
                     初雪山を背に    photo by shun
 今回登った「初雪山」は、春先の限られた時期にしか行けません。頂上までの登山道がなく、ブッシュに邪魔をされるからです。また頂上直下の急斜面が、その年その時期の雪の状態でどのようになっているか分かりません。今年になって少しづつ低山などを徘徊(?)している私ですが、まだまだ本格的な春山など行けないと思っていました。
 しかし、花じいさんとターさん・シュンちゃんが計画していた山行に誘われて、初めは「今の私の実力では、まだまだ初雪山は無理だと思う。もし連れて行って貰えたとしても、足の遅い私がいたら念願の頂上まで時間的に辿り着けなくなるかもしれない。また、もし何かあったら他の人に迷惑を掛けることになるといけないから、今回はやめておく」とはっきり言ったのです。
 それでも「リーダーもしっかりしているし、大丈夫だと思うからぜひ一緒に行こう」と、もう一度誘われて気持ちは傾きました。到底自分だけで行ける山ではないし、誰にでも連れて行って貰える山ではないから、もし途中でダメだと思ったら一人で待っている覚悟で、憧れの山を目指すことにしました。
 結果は…本当に行って良かったと思いました。
 それでも今回は、雪融けが早く林道歩きが時間的にも体力的にも消耗が少なかった事、頂上直下の急斜面がアイゼンを使用しなくても良いくらいの適度な雪の状態でキックステップで行けた事、標高1,000m以上では強風は吹いたがそれでも天候に恵まれた事、リーダーはじめメンバーに恵まれルート取りも問題なく最短・最良のコースで行けた事…等などの好条件により頂上まで登ることが出来ました。
 本当の事を言えば、前日の会合で同席した県警の古崎隊員や救助隊の谷口隊長、大和隊員など何人もの方達から、「林道歩きはかなり大変だ」「頂上直下の急斜面で、もし危ないと思ったら必ず引き返してくるように」…といくつもの注意をされていたのです。だから正直言って本当に行けるかどうか、頂上に立つまで半信半疑でした。
 常々、「自分の実力と体力に合った山歩きを」と言っている私。自分が歩いてみるとつくづくそれを痛感します。更なるレベルアップを目指して頑張ります!!