北アルプス 朝日小屋

朝日小屋 TEL 080-2962-4639(衛星電話)
北又小屋 TEL 0765-84-8809
開設期間外 朝日小屋連絡所
 〒939-0711 富山県下新川郡朝日町笹川 清水ゆかり
 TEL & FAX 0765-83-2318

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『ホシガラス』のこと

2003-05-16

三国境から見た鉢ヶ岳、雪倉岳、そして朝日岳・前朝日岳   02.9.26

 三国境から見た鉢ヶ岳、雪倉岳、そして朝日岳・前朝日岳   02.9.26

 『ホシガラス』− 高山を歩いていらっしゃる皆さんでしたら、きっとこの鳥を何度も見かけていらっしゃることでしょうネ。
 『ホシガラス』…星烏・星鴉。スズメ目カラス科。高山〜亜高山帯の針葉樹林に住む留鳥で、下界で見かける“カラス”よりやや小柄なハトほどの大きさで体長は約35†前後。ハイマツの実などを主食としている。鳴き声は「ガーガー」。茶色がかった黒っぽい体毛に、白い斑点が鮮やかに見える。
 小さい頃からほとんど北又〜朝日岳しか歩いたことがなかった私は、恥ずかしい話ですが「ホシガラス」の存在を知りませんでした。名前も聞いた記憶がないし、実際出逢ったこともありませんでした。
 ところが、朝日小屋の中に「ホシガラス」の名前が付けられている部屋があります。お客様の目につかない、以前は“おっちゃん部屋”(アルバイトの人が使っていた)とも呼ばれていた、今は物置になっている3畳程の小さな部屋です。
 管理人になって初めてのシーズン、小屋に入った私は何故かその部屋に付けられた「ホシガラス」という名前に強い抵抗感を覚えました。
 『ホシガラス』…私の印象は全く以下のようでした。
  「ホシ」=「干し」=「梅干」
  「カラス」=「真っ黒い体の、カーカーとうるさく鳴いて、何だか不気味な雰囲気を持つ」“下界の”カラス
 だから私の「ホシガラス」のイメージといえば、〜干からびた(?)カラス〜(笑)
 そんな私が初めて「ホシガラス」を見たのは、一昨年歩いた蓮華温泉〜白馬大池〜白馬岳〜朝日岳のコース、三国境から白馬岳へ向かった登りの道すがらでした。
 ガイドしてくれた写真家の森下さんが、「あれが、ホシガラスですよ」と教えて下さいました。その時、あの両側切り立ったガレ場を颯爽と、そしていとも楽しそうに、軽やかに何ともスマートに、スーイスーイと飛び廻っていたのが「ホシガラス」。
 私の印象は完全に覆ったかって?…う〜ん、先入観とは恐ろしいもの。「ホシ=星」に結びつかなくて困惑したまま、どうしても「ホシ=萎びた」となってしまうのですが(笑)、実際に飛翔している『ホシガラス』の姿は本当にステキです。
 インターネットに載せられた『ホシガラス』の写真、どれも愛らしく写っていました。今年も何処かで出逢えるといいなぁ。

今日からの予定、急遽変更に!

2003-05-17

雪上での訓練、支点の取り方など  尾安谷上部にて  03.5.11

 雪上での訓練、支点の取り方など  尾安谷上部にて  03.5.11

 “真夜中の日記”になりました。(只今の時刻、17日am1:00)
 
 今日は、朝7時役場前集合で遭対協の訓練に参加してきます。場所は立山駅傍にある「文部科学省登山研究所」と「雑穀谷」。今回は宇奈月町遭対協との合同訓練となり、1泊2日の日程です。主な訓練内容は、クライミングの確保、支点の取り方、ザイルワーク、引き上げ・引き下げ訓練等など。
 私が参加しても何が出来るというわけでもないのですが、しかし遭難現場に一番に駈け付ける救助隊員の皆さんの大変厳しい状況を自ら感じたい、山小屋管理人として少しでも救助活動に必要な知識を習得したい、そんな思いで参加してきます。(でも、専らデジカメでみんなの姿を撮影する?)
 それから18日夜は所用で、家に居ません。
 そして19日〜21日まで、急遽北又へ行くことになりました。詳しい内容は帰ってから報告します。
 小屋開けまであと一ヶ月を切った現在、この後の予定も考えると2泊3日の山行きは結構キツイのですが、この時期の北又、そして多分5合目辺りまで登ることになるかと思いますが、なかなかそこまで行くチャンスは管理人の私でもあまり無いと考えて、同行することにしました。
 そういうわけで、来週半ばまでドタバタします。日記は書けませんが、また皆さんにいろいろな情報をお伝えできると思いますので、楽しみにしていて下さい。
 ただし今年、今の時期の北又周辺はかなり“熊”がウロウロしているようなので、少々心配ですが、“熊”も恐れを成して逃げ出すような「山男」が一緒なので大丈夫でしょう(苦笑?)。
 朝は出掛ける準備に一生懸命だと思うので、チョッとガンバッテ“真夜中の日記”を書きました。
 それでは、行って来ます!!

無事、下山!!

2003-05-21

最新情報・北又小屋    03.5.19

 最新情報・北又小屋    03.5.19

        この小屋の前の雪も、今日帰る頃には融けて。

 無事、北又から戻りました!!
 今回は19日から2泊3日で、19日・小川温泉元湯から入山・北又周辺散策、20日・恵振山7合目上部まで、21日下山 のスケジュールでした。
 いろいろ盛り沢山だった今回の北又行き、詳しい事は明日以降の日記でご紹介します。
 “未知との遭遇”(!?)、静寂の山歩き、新緑のブナ林や奥深い自然との語らい、残雪の恵振山、可憐な高山植物との出逢い、そして『お勉強』…と、もう本当に最高でした!!
 3日間のあまりの感激に少々興奮気味の私、一体何から書いたらよいのか、頭の中の整理が出来ずに、実は戸惑っています。

 合わせて、17日から1泊2日で行われた宇奈月遭対協との合同訓練の様子も順次お伝えしていく予定です。

 今日も帰って来てから、いろいろ飛び入りの用事があったりドタバタしていたので、とうとう短い「お知らせ日記」しか書けませんでした。
 明日は午前中の予定が詰まってしまいましたので、お楽しみは夕方以降になるかと思います。
 あしからず。

静寂と新緑…恵振山7合目上部まで

2003-05-23

深い深い静寂の中   5合目のブナ林   03.5.20

 深い深い静寂の中   5合目のブナ林   03.5.20

 19日(月)から2泊3日の行程で、北又小屋をベースに恵振山7合目の上部まで行って来ました。今回の山行は、写真家の森下 恭さんが北又周辺〜恵振山のブナの新緑を撮影したいと希望されて実現したものです。
 今の時期、町道湯ノ瀬〜越道峠〜北又線は整備が終わっていないので通行止めですし、北又周辺と恵振山は残雪で夏道(登山道)は不明瞭な箇所だらけで危険です。また、“熊”が出没しますから誰もが容易に入山できるということはありません。
 そんなわけで今回は、私も所属する大蓮華山保勝会会員でまた地元の猟友会に所属し、その上朝日岳方面遭対協の救助隊員でもあるという方にガイドをしてもらいました。
 一緒に行ったのは、ガイド役の水野幸正さん(コーちゃん)、写真家の森下 恭さん、北又小屋の小屋番をしている長津一雄さん、そして私の4名。
 初日は北又小屋まで行き、周辺を散策しました。夕方、今の時期水量が豊富で見ごたえのある「北又の三段滝」を見た後、コーちゃんから山菜の取り方や植生、野生動物のこと等などを教わりながら歩きました。
 そして“未知との遭遇”−「熊」との接近!! …約30メートル程の距離でした。残念ながら、デジカメに収めることは出来ませんでしたが、生まれて初めての貴重な体験でした。
 2日目は、7合目辺りまでの予定で恵振山を登りました。
 恵振山〜朝日岳周辺は、まだまだ手付かずの自然が残された大変貴重な場所です。「高山植物の宝庫」ということだけでなく、特に森下さんが注目し今回の撮影目的とされた「ブナの原生林」は、『大蓮華』と称される朝日岳〜白馬岳にかけての山域の、豊かでありのままの自然を象徴するものに違いありません。
 当日の天候は曇り、ガス、霧雨、そして時折見える薄陽…。
 「ブナの林には、こんな天気がよく似合うんですョ」
 ボソッとそんなことを言いながら(微笑)、森下さんの撮影は順調に進みました。
 ほぼ登山道沿いに歩きましたが、5合目のブナ平付近から上は残雪が多く、コーちゃんが撮影ポイントとなりそうな場所を案内しながら、たっぷりと時間をかけて登りました。
 5合目のブナは新芽が吹いてから少し経っていましたが、それでも残雪も多く、まだまだ新緑から若葉への移り変わりを楽しむことが出来ました。
 また7合目の先まで上った頃には濃いガスが霧雨に変わりましたが、ちょうど今が芽吹きの時とばかりのブナが花を咲かせており、水滴を付けた黄緑色の新葉がとても印象的でした。
 7〜8合目の中間点辺りからはまだまだ残雪の量も多く、急に切れ立った状態の雪渓が続いていましたし、また森下さんの撮りたいポイントも過ぎたので、登りはそこまで。
 ところがバックして5合目のブナ平まで戻ると、行きの時には濃いガスで何とも鬱蒼として幻想的だった林の中が、今度はガスも適当に晴れてきて上りに通った時とはまた違った表情のブナに出逢うことができました。またまた森下さんの撮影タイム、じっくりと時間をかけて自然の姿を撮っていらっしゃいました。
 21日は、コーちゃんと私で下山。もう一日撮影したいとおっしゃる森下さんと長津さんは22日の下山となりました。
 朝日岳に登り始めた小学生の頃から付き合いがあるコーちゃんと、「おーッ、ゆかりとこうやって3日間も歩くのも、珍しいなぁ。昔、八兵衛平や照葉の池辺りへ遊びに行って以来やな」等と話しながら下って来ました。
 いろいろあった『感動の3日間』の様子は、到底一度には書ききれません。
 感じたこと、学んだこと、心に刻んだ想い…等など、また折に触れ綴っていきたいと思います。

行ってよかったぁ…

2003-05-23

7合目、とっても嬉しそうな顔で(笑)  03.5.20  photo by morisita

 7合目、とっても嬉しそうな顔で(笑)  03.5.20  photo by morisita

 数日前の日記にも書きましたが、本当はコーちゃんに森下さんの案内をお願いして、今回私は行かないつもりでした。
 しかしコーちゃんから「お前も行くんやろ!?」と言われて「えーっ!」と考えてしまいました。
 でも恵振山の途中までとはいえ、今の時期に入山することは管理人の私でもなかなかそのチャンスに巡り合えないと思い、同行することにしました。
 そして…本当に、行って来てよかったと思っています。
 『山』はいいです。
 帰って来てから、コーちゃんと同じく小さい頃から私のことをずっと見ている方にこう言われました。
 
 『ゆかりは、“山”じゃなくて“山小屋”が好きだったんや。昔から父親の仕事を一緒に手伝ってきた“山小屋”が好きで、そして管理人になった。なりたいと思った。でもこの頃のお前は、“山”を、“山そのもの”を段々好きになってきているナ…』

たくさんの花たちに出逢って

2003-05-23

イワナシ    03.5.20

 イワナシ    03.5.20

 カタクリ、イワウチワ、オオカメノキ、何種類ものスミレたち、ショウジョウバカマ、タムシバ、ヤブツバキ、イワナシ、ツツジ(ムラサキヤシオツツジ?)、ヤマザクラ、(コ)イワカガミ、シラネアオイ…そして初めて見た“ブナの花”
 
 赤、純白、絹色、薄紫や紫、様々なピンク色、…
 
 「あの花、可愛い!この花の色、とてもステキ!!」
 …そんな風に感嘆の声を上げながら、でも本当は、表現する言葉はなにも要りませんでした。

宇奈月と朝日町の両遭対協が、合同で遭難救助訓練

2003-05-24

遭難者を背負い、岩場をザイルで下降する訓練の様子    03.5.17

 遭難者を背負い、岩場をザイルで下降する訓練の様子    03.5.17

 17・18日の両日、立山町の文部科学省登山研修所において、宇奈月町と朝日町の遭難対策協議会の夏山遭難救助訓練が合同で行なわれ、私も参加して来ました。
 当日は、宇奈月遭対協から山本隊長・野村副隊長・佐々木救助部長他の隊員、そして朝日遭対協からも谷口隊長・廣田副隊長以下のメンバーで、総勢約20名の参加者が、夏山を中心とした登山者の遭難救助を想定して、旧知の間柄を生かした活発な訓練を行ないました。
 県警山岳警備隊からは、黒部署の飛弾分隊長と山田隊員、入善署から古崎分隊長と谷口隊員、そして3月まで黒部署に勤務しておられた横山 隆分隊長も講師に加わって下さいました。
 訓練の内容は、クライミングの確保、支点の取り方、ザイルワーク、クライミング、ハーネスの付け方、引き上げ・引き下げの訓練など、用具の使い方などの基本的動作から、実際の遭難現場での動作の徹底と確認等など。
 私もやりましたよぉ!…ハーネスを付けたり、カラビナをぶら下げたり、実際に救助活動で使うザイルの結び方を教わったり。
 昨年5月の同じく合同訓練の際に、人工壁でぶら下がったことがありましたが、その時は本当に「ただ、ぶら下がっていただけ(笑)」。足場の確保にモタモタしていたりすると、ザイルで“猿回し”の如くひょいっ・すっと引っ張られるようにして引っ張り上げられていました(爆笑)。
 でも、今回はそういうわけにはいきません。かなり真剣にやったつもり(!?)。というか、いろいろやってみると、分からない中にもだんだんと興味が湧いてきます。もちろん、実際現場での救助活動を想定しているわけですから、面白いなんてことは言っていられませんが、いつかクライミングにも挑戦して(やり始めて)みようかという気持ちにもなって来ました。
 古崎分隊長がトップになってくれて、その後から私も難易度の低い壁も登りました。懸垂下降にも挑戦しました。“背負われ役”となって壁の下降もしました。
 私は山小屋の管理人として、少しでも登山者の皆さんの快適で楽しい山行のお世話を出来ればと、いろいろ考えているつもりです。がしかし、ひとたび緊急の事態が発生し、事故や遭難ということになれば、それはもう『厳しい山の世界』の話に一転してしまうわけです。
 私に出来ることは、小屋からの人的応援、小屋での無線連絡、そして食料の調達や物資の提供、負傷者や病人の一時的看護くらいしかありません。そんな中で、時には自分の命さえ覚悟して救助に飛び出す県警山岳警備隊の皆さんをはじめ、ボランティアでそれに加わる遭対協の救助隊員の皆さんの仕事には、常々本当に頭が下がります。
 宇奈月遭対協と朝日遭対協関係者には、「遭難救助や、その現場に境はない」…そんな思いから始まった合同訓練ですが、回を重ねるごとにお互い顔見知りにもなり懇親も深まり、いずれ同じザイルを組む時が来るはずですので、今回の訓練がまた必ず役に立つと思います。

宇奈月遭対協の「若きホープ」!

2003-05-24

祖母谷温泉の峰村利数さん

 祖母谷温泉の峰村利数さん

 峰村さんは、山小屋・祖母谷温泉を経営していらっしゃる立山町芦峅寺の佐伯芳弘さんのお孫さんにあたります。
 すでに数年前から実際に祖母谷温泉の仕事を手伝っていて、宇奈月町に在住。まだ20代ですが、12月には2人目が生まれるパパで、宇奈月遭対協の「若きホープ」です。
 聞くところによると、その昔レスリングで全日本の元・ジュニアチャンピオンという輝かしい経歴の持ち主とか。
 どうりで、ガッシリした体格はなかなかのもの、80キロの怪我人も大丈夫という雰囲気があり、頼もしい限りです。